名前を決めることはなかった
写真を撮ることもなかった
私達がいつもの散歩に出かけたのは夕飯後の18時30分ころでした。
白内障で目が殆ど見えない犬(ミニチュアダックスフンド:16歳:なな)をペット用バックに入れて歩くのは旦那の担当。
ななはこの散歩が大好きで、自分で歩いている感覚なのだろう。
いや、飛んでいるという感覚なのかも。
まるで、子供が親に肩車されて歩いているような感覚で・・・
いつものコースも終盤に差し掛かった時、旦那が
あれ何だろう?ほら、あの黒いやつ
おおよそ見当はついていましたが、子猫でした。
見た目で1ヶ月に満たない小さな子でした。
私達を見ても逃げる素振りもなく、私達の足元に弱々しく近寄ってきます。
周りを見渡しても親や兄弟がいる雰囲気はありません。
このままだと車に轢かれてしまうか、カラスにやられるか、死んでしまうのを待つばかりかも。
保護しなければ、この子は死んでしまう。
でも、家にはななと先住猫(キジ猫:11歳:しまお)がいるから、更に増えるのには慎重にならざるを得ません。
足元では弱々しくなく子猫が…
保護する?
私が言うと、旦那は同意してくれました。
小さな命との出会い、このままにはしておけない、救おう。
私が抱いて家まで連れていきました。
この子は保護猫となりました。
野良猫は一度人間の匂いがついてしまうと、その子を受け入れなくなります。
もう後戻りはできないな、と思いました。
その日は即興でダンボールを用意して簡易ゲージを作りましたが、適当な大きさのトイレや離乳食や猫用ミルクがないので、急遽ドラッグストアに買い出しに行きました。
そのドラッグストアは100均も併設しているので、トイレに使うトレイも手に入ったのは幸いでした。
ダンボール箱にトイレとタオル、水を入れて簡易ゲージは完成です。
肝心の子猫の状態はというと・・・
- 目ヤニが多い
- 体全体が汚れていて、黒い粉のようなものがたくさんある
- 痩せている
- ゼロゼロと鼻水が詰まったような、痰が絡んだような音がある
- 体温が低い
私達と出会った時は、親や兄弟とはぐれて食べることもできずに衰弱し、必死の思いで移動しようとした最中だったのだと思われます。
車が来ても逃げることもできず、カラスやその他の動物にて襲われても逃げることもできなかった。
そんな時に、私達と出会ったんだと。
買ってきた猫用ミルクを近づけても飲まないので、シリンジを使って口中に入れましたが、舐める程度でおしまい。
離乳食も受け付けません。
きっと、緊張と餌を食べる方法に戸惑ったのだ(分からなかった)と思います。
とりあえず、段ボール箱の中で休ませることにしました。
段ボール箱の中にはタオルと小さなトレーで作ったトイレを置きました。
9月の下旬とはいえ、まだまだ残暑が厳しいので寒さの心配はいりません。
今、これ以上のことはできないので明かりを消し、明日の無事を願いました。
そして朝、旦那が私に
やっぱり、戻してこようか。昨日の場所に・・・家にはすでに2匹のチビたちがいる。これから色々と大変になるのは目に見えている。
旦那は相当に葛藤していたようです。
だから写真を取らなかった。飼えない選択をした時に、後悔の写真となってしまうから。
だから名前をつけなかった。情が湧いてしまうから。
迷いながら、二人で子猫を見に行きました。
すやすやと寝ていました。
上から見た丸い背中を見た瞬間、愛おしさが溢れてきました。
この時、この子の名前が決まりました。
福(ふく)
この子にそして我が家が「福」で一杯になりますように・・・
次回に続きます。