学校現場で教員による盗撮・性犯罪の報道が後を絶ちません。
多くの自治体では厳しい綱紀粛正がすでに行われ、研修や注意喚起も繰り返されています。
しかし、それでも“事件がゼロにならない”という事実は、教育現場に大きな不信と不安を生んでいます。
ではなぜ、「強い綱紀粛正下」でも盗撮は起きるのか。
背景には、「個人の問題」とそれだけでは語りきれない「学校組織の構造的な弱点」が存在します。
本記事では公認心理師でもある筆者がその原因を整理し、さらに現実的かつ導入可能な再発防止策をまとめます。
なぜ強い綱紀粛正下でも盗撮が起きるのか
教員による盗撮事案が後を絶ちません。
これだけ報道されているのに、なぜ盗撮をしようとするのか、大丈夫だと思うのか不思議でならないと思います
これは、教員の立場や陥りやすい心理的要素に加え、学校という特殊な環境が複雑に絡み合い、それらがトリガーとなって発生していると考えられます。
■盗撮行為は、
- のぞき見による刺激性
- バレないようにするスリル
- 動画を保存する満足感
が快感と結びつき、反復しやすい行動と言われています。
場合によっては
- 盗撮を繰り返すことで刺激が強化される
- 行為に依存的になる
- 見つかっても「次はうまくやれる」と考えてしまう
といった“強化ループ”が生まれ、論理的判断より衝動が優位になることがあります。
この状態は、専門的には「認知制御の低下」と呼ばれます。
①「自分だけは発覚しない」という心理バイアス
犯罪心理学でよく指摘されるのが、
- 正常性バイアス(自分に限って大事にはならない)
- 楽観バイアス(他人は失敗しても自分はうまくやれる、見つかるリスクを過小評価する)
- 成功体験(見つからなかった経験)があれば、それが自信になる → 「勤務態度に問題はなかった」とよく言われるが、上司や周りが見抜けなかったという可能性大
綱紀粛正の強化は「事件が発覚したときの罰」を重く見せますが、犯罪をする側はそもそも「自分は見つからない」という前提で行動します。
そのため、罰則の強化だけでは一定数の抑止にしかならず、完全な防止策になりません。
「不祥事を起こしません」という署名を記すことも、犯罪をする側には効果なし
② 学校が“閉鎖空間”であり、外部の目が届きにくい
学校は構造的に外部監査が入りづらく、
- 職員室
- 更衣スペース
- 教員専用エリア
などが一般人から隔絶されています。
この閉鎖性は、「監視されていない」という誤った安心感を一部の教員に与えます。
さらに、同僚が互いの行動を細かくチェックする文化が弱く、異変が発見されにくいという現実があります。
③「教員は信用されて当然」という空気が監視を阻害する
学校文化には、
- 教員は模範的であるべき
- 教員を疑うのは失礼
という暗黙の前提があります。
そのため、民間企業なら普通に行われる
- 監視カメラの設置
- 施錠・アクセス管理
- ロッカーの点検
といった対策が「不祥事前提の管理」と捉えられてしまい、導入が進みません。
④ 管理職の監督権限が“制度上はあるが実質は弱い”
校長・教頭は組織の責任者ですが、
- 個人の私物の監視はできない
- 職員一人ひとりの行動を追えない
- 大量の事務と会議で現場を見る時間が少ない
など、現実的には監視が困難です。
「管理職が見ていないすきに行動できる」という状況が生まれやすいのです。
⑤ 性犯罪・盗撮に関する専門知識の不足
学校は“教育機関”であって“セキュリティ専門組織”ではありません。
多くの教員・管理職は、
- 小型カメラの種類
- 盗撮機器の隠し方
- 不審行動の兆候
- 非接触型の記録装置
などの知識を持ちません。
結果として、兆候を見逃す構造が生まれます。
⑥立場上の“万能感・特権意識”が引き金になることも
教員は通常、
- 教室内で強い権限を持つ
- 学校という閉鎖空間で指示を出す立場にいる
ことから、「自分は見られる側ではなく、管理する側」という誤った認知が形成されることがあります。
その結果、
- 他者のプライバシーへの感覚が鈍くなる
- 自分だけは許されるという錯覚
が起こるケースも指摘されています。
ただしこれは教師という職業固有の問題ではなく、権限を持つ立場の人が不正行為に及ぶ時に見られる一般的な心理です。
学校組織の構造的な弱点
背景には以下の4つの問題が重なります。
① 外部の目が入りにくい閉鎖性
② 監督権限が実質的に弱い管理職
③ 信頼前提の文化によるチェック機能の不足
④ 不祥事を嫌う組織風土(内部告発がしづらい)
これらは“教員の資質”とは別に、組織として持っているリスクです。
よって、個人の道徳心だけに依存した対策では、根絶は難しいと考えられます。
学校における盗撮・性犯罪の再発防止策
【1】更衣室・教員専用スペースの構造改善
- 上部・天井にデッドスペースを作らない
- ロッカー・棚の隙間を極力なくす
- 私物の持ち込みを最小化
- 定期点検を「ルール」として明文化する
※プライバシー配慮のため、管理職は“構造物の点検”だけを行い、私物の確認は行わない
→ 不正設置の難易度が大幅に上がる
盗撮の報道をトリガーとして、校内の点検を不定期かつ迅速の実施するのは大変効果的
【2】小型機器の持ち込みルールの明確化
- 小型録画機器の校内持ち込み禁止(業務用は申請制)
- スマホの利用範囲を職務に限定
- USB機器・カメラ機器のログ管理
民間企業では一般的な運用で、学校でも十分可能
【3】ICT設備のログ監視(校内にサーバーが設置されている場合)
- 校務PCの利用履歴
- WiFi接続履歴
- 外部デバイスへのデータ転送履歴
- カメラ付きデバイスの接続ログ
盗撮機器の設定にはPCやスマホが必要なため、ログが残れば抑止力になる
【4】管理職による未然防止対応
- 校長・教頭が1日数回、特定の時間に巡回
- 更衣室・倉庫の“入口”だけでも確認
- 電気のつけっぱなし・施錠漏れをチェックし、適宜指導
- あやしい行動が疑われる教員のリサーチ(前任校へ問い合わせ、その他情報収集)と記録の蓄積
「いつ巡回されるかわからない」だけでも犯罪抑止効果があります。
リサーチは非常に重要
【5】不審物点検の仕組みの導入
- 用務員との協力体制
- 月1回の“全教員による共通点検”(報道をトリガーとして随時実施も)
- 「小型機器が置ける場所」をリスト化し確認
小型カメラは“置ける場所が限られる”という弱点があります。構造化してしまえば発見率が上がります。
月一回行う「安全点検」に「不審物点検」の意味合いをもたせることが重要
【6】「兆候」を知る研修の実施
以下は加害予防の専門家が指摘する共通ポイントです。
- 特定の更衣室に執着
- 暗い場所や倉庫に頻繁に出入り
- 小型ガジェットを複数所持
- 記録可能媒体を常に持ち歩く
- 指導力・指導内容・男女差別・発言内容・コミュニケーションに課題
研修に組み込むだけで教職員の気づきが高まり、通報が早期化する
【7】外部監査の導入
- 退職校長・外部の教育アドバイザー
- 弁護士
- セキュリティの専門家
年数回、校舎内のデッドスペース・防犯設備を点検するだけでも、組織の緊張感は大きく変わる
まとめ:個人の倫理依存では限界
盗撮事件の加害者は「倫理の欠如」だけが原因ではなく、“構造的な弱点がその行動を可能にしてしまう”という視点が重要です。
つまり、
- 綱紀粛正や研修だけでは防げない
- “個人任せ”の対策では限界がある
- 組織の仕組みとして防犯を強化する必要がある
ということです。
学校は公共性が高く、社会から強い信頼を求められる場所だからこそ、民間企業以上にセキュリティ意識を高める必要があります。
盗撮のような不祥事がひとたび発生すれば、保護者や地域の信頼の上に成り立つ学校教育は崩壊の一途を辿ることになり、まじめに働く教員やその学校に通う子供とその保護者にもマイナスの影響をもたらすことになります。
本稿の対策はすべて現実的に導入可能で、すでに一部の自治体では実施されています。
これらを組み合わせることで、不祥事の発生を低減し、学校の信頼性を取り戻す一歩となるはずです。
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