【GR86】3ヶ月で走行距離たった2000kmの長文レビュー

GR86の走行距離は、3ヶ月でまだたったの2000km。

新車の匂いがまだプンプンと車内に立ち込めています。

ほぼ毎週洗車しているし、WAKOSのバリアスコートを重ね施工しているので納車時以上の輝きです。

ネット上にもたくさんのレビューがありますが、あくまでも素人目線ですのでご了承ください

エクステリア

タイヤとホイール

タイヤはミシュランのパイロットスポーツ4で215/40 R18だ。車は最終的にタイヤの性能で走るので、タイヤが持つ性能と接地面積は車の性能に大きな影響を与える。世の中のハイパワースポーツのタイヤサイズを見ると、普通の車では見られない幅広のタイヤを履かせており、「タイヤの性能 = 車の性能」という印象を抱いてしまう。

GR86のタイヤ幅はわずか215、パイロットスポーツ4の性能が良くてもスポーツカーとしてはちょっと幅が狭いかな、と思ってしまう。逆に言うと、タイヤ性能に依存しないで車の持つポテンシャルを生かせるスポーツカーだということができるのではないか。

ホイールは「刀」をイメージした10本スポークのシンプルなデザイン。GR系の車に多く採用されており、マットブラックの塗装が白い車体にメリハリを与え、車の下半分をキリッと見せる効果がある。デザインがシンプルなので、洗い易く洗車グッズを選ばない。

RZグレードには標準でハイμタイプのパッドが付いており、重めのブレーキ感と相まって高いブレーキ剛性を感じる。踏力に応じてリニアに減速Gが得られ、安心感も高い。ただし、その代償としてブレーキダストが多く、洗車後ちょっと走っただけで茶色いダストがホイールに付着してしまう。

比較としてクラウンHVのブレーキは回生ブレーキとの併用のためにダストは殆どと言っていいほど出ない。また欧州車のボルボV40と比較すると、ダスト量は同じくらいか。ちなみに、後輪はノーマルパッドだ。毎週洗車するのでブレーキダストはそんなに気にならないことは付け加えておこう。

ブレーキ鳴きもある。止まる直前やブレーキを緩める際に「ギギッ、ギー、ググッ」と鳴るので、気になる人はノーマルパッドを選択するか、交換するとよい。BRZのレビューで制動力が今ひとつというのを見た(BRZはハイμタイプを選べない)のでハイμタイプを選択したのだが、インプレッサSTiのブレンボで鳴きに慣れている自分にとって気にするほどではない。

フロント部

兄弟車であるBRZとの最も異なる点がフロントバンパー部だ。よく言われていることではあるが、BRZは笑い顔、GR86はキリッと顔。大きくシンプルな造形の開口部が好みで、もしこの部分が逆の意匠であったならば、BRZを購入したことだろう。

メッシュ部分のGRファンクショナルマトリックスグリルはGRのGがあしらわれており、デザイン的に凝った形をしているのだが、目を凝らさないと分からないレベルだ。両側にはホイールアーチ内に空気の流すダクトが開いており、整流板には鮫肌模様がある。コーナリング性能や車両の安定性に寄与する頼しいが、一般道を走る者にとって、その効果は全く分からない。

光沢カーボンタイプのナンバープレートフレームを装着、さらに同メーカーのフレームベースも装着したところ、見栄えが向上した。

LEDヘッドライトは十分な光量がある。遮光機能があるアダプティブハイビームではなく、上下切替式のオートハイビームだ。クラウンのようなデイタイムランニングライト機能はない。ポジションランプをデイタイム化するハーネスが発売されており、価格は1~2万円程度。自分としては必要なし。

サイド部

ホイールとホイールアーチの間が大きく、ローダウン前提のような作りはなぜなのだろうか。もう2cm下げたら完璧だと思うのだが。

特徴的なサイドステップは市販車でもかなり攻めたデザインとなっており、リヤのダックテール部と併せて、かなりのダウンフォースを発生させるのではないかと思わせる。サイドステップ後端下部には透明フィルムが貼ってあり、跳ね石による傷防止に役立っているが、フィルムのエッジにゴミが付着し、輪郭が目立ってしまうというデメリットもある。

2シーターと見間違うデザインであるが、2+2を実現できていることに驚かされる。ダークスモークフィルムの効果で引き締まった印象が加わる。

シャークフィンアンテナはクラウンと比べて大きく、もう少し小さいとなおよい。

リヤ部

リヤ部はGR86の官能的な印象部分が集約している。まず、サイドからリヤウインドウ付近にラインが絞り込まれ、それに相反してリヤフェンダーの膨らみが強調されるデザインになっている。リヤバンパーに施されたR処理が肉感的で非常に色っぽい。

サイド斜め45°付近から見えるトランク上部のダックテールがとてつもなくかっこいい。

リヤフェンダーの膨らみは、サイドミラーで見る度にニヤッとしてしまう。

2本出しのマフラーとその間にあるディフューザーは機能的な美しさをもっている。

バンパー下部の未塗装樹脂部分は、その材質のためか、柔らかく傷が付きやすいのが欠点。インテリアの項でも書くが、プラ部品の材質の硬度が足りずに傷が付きやすいのは、スバルの基準の故なのか、コストダウンの為なのか。

外装の未塗装部分には光沢アップと表面保護のため、WAKOSのスーパーハードコートを施工した。

インテリア

コンパクトな車だけあって、包み込まれるようなコックピット感がある。メーター脇の円形の吹き出し口やセンターコンソールが目前に迫って一層手狭感を煽り、「ああ、スポーツカーに乗ってるんだな」と運転席に潜り込むたびに嬉しさがこみ上げる。GR86に乗っている時は、非日常感を味わえる特別な時間なのだ。

メーター

デジタルメーターはオープニングとエンディングアニメーションがあって、GRの車に乗っているのだという喜びを感じさせてくれる。デジタル表示のため、車速に応じた針の動きは見られないが、円バーグラフ式のタコメーターは視認性が大変良い。

回転数アラームを設定でき、慣らしが終わった今はレッドゾーンの1000回転手前の6500回転でアラームが鳴るように設定している。設定した回転数以降タコメーターの色が黄色になるのもかっこいい。

中央と左側は7インチのカラー液晶、右側は白黒液晶の構成だが、8インチ液晶だとさらによかったと思う。大きさは迫力に繋がり、見た目の満足度に大きな影響を与える。

液晶のデザインの変化を楽しむためにトラックモードに切り替えることもある。街乗りレベルではメーターが殆ど振れないのは仕方がない。

スポーツカーだけあって、情報表示は多彩だ。Gメーターやエンジン出力グラフ、ストップウォッチ、燃費、時間、各種温度、アイサイト関連、車両設定関連がある。

メーターバイザーにはブランノーブが施され、フロントガラスにバイザー部が映り込むのを防止している。視認性を重視するこだわりが嬉しい。

ウインカーレバー

ウインカーレバーは作動時に中立位置に戻るタイプ(モーメンタリー式)が採用されている。 賛否両論あるが、国産車でもレクサスなどの高級車はかなり前から採用していた。高級車を買う客層にとってはあまり気にならない箇所だとは思うが、GR86の購買層にとっては、この戻るタイプは違和感が大きいかもしれない。

ワンタッチウインカー(ちょい押しで3回点滅)は「切」にしており、その方が自然な感じでウインカーを出せる。オンにしていると、全押しでウインカーが点滅している状態でキャンセルする場合、反対側にちょい押しをするのだが、それがうまくいかないと反対側にウインカーが点滅してしまう。かなり混乱する(恥ずかしい)ので、「切」がベストだと思う。

ヘッドライトはオートが基本なので、ライトを消灯するにはライトスイッチを下側に長回ししなければならない。オートライトの感度が良すぎるので感度を下げたいがディーラーでないと設定できないのはどうしてか。また、このライトは消灯時間が長過ぎ、トンネルを出ても結構な時間点灯してしまうのが難点。この消灯時間はライト感度を調整してもランプ保護のために変化がないらしい。クラウンはユーザーが設定で、オートライトの感度を変えられるようになっている。

ナビゲーション

ナビは純正以外にも、一般的な7インチ、トヨタの一部車種用の7インチワイド、9インチを装着可能だ。ただし、トヨタディーラーで7インチ用のスペーサーを注文すると7インチワイド用となるので注意したい。純正ナビは割高感があって出費を抑えたい場合は社外品の選択となるが、このスペーサーが1万円ほどするので結局は…メーカーも商売上手である。

スマホのマップが市民権を得ている今、地図データを有料で更新するのはナンセンスだと考えるので、ディスプレイオーディオのナビを選んだ。ATOTOという中華製ナビで、UNIXベースのディスプレイオーディオF7 XE 7インチを選択。XEタイプはワイヤレスCarplayとワイヤレスAndoroidAutoに対応し、ユニットがホットスポットとして機能する。AndoroidAutoの無線化はなぜか成功しなかったが、Apple iPhoneとのワイヤレス接続は簡単にでき、無料のナビアプリ、AppleMusic、YouTubeMusicを楽しんでいる。

Carplayを使わなくても本体側の機能としてSDカードに入れた音楽や動画、ラジオを視聴できる。これが2万円台で購入できるのだから素晴らしい。

ステアリングスイッチはBRZにある電話の受発信が付いていない。ステアリングスイッチは社外ナビでも機能するのだから、なぜ装備されていないのか。同じ部品なのだから、スイッチくらい同じの付けたらいいのではないか?

デザインはCarplayに軍配

社外ナビをインストールする際の注意として、ケーブルに関する仕組みを理解しておくことが必要になる。RZは8スピーカーで、その内2つのフロントドアスピーカーは車内の別アンプで動いている。それを鳴らすにはアンプの電源を入れるためのケーブルの改造が必要になる。

さらに、ラジオのアンテナアンプの配線にも注意が必要だ。GR86はケーブルは日産系を流用できる(スバル系ではステアリングスイッチコントロールが未配線)が、アンテナ関連はスバル系の配線となるので、本当に厄介だった。専用ケーブルがあればよいのだが…繰り返すがスピーカーアンプとラジオアンテナアンプのターンオン配線だけは気を付けること。

【ディスプレイ オーディオ】ATOTO F7 XEをAndoroid AutoからApple Carplayにしてみた

ナビの大きさについて、スポーツカーに大きなナビは不必要と考えるので、7インチで十分だ。

ナビの位置について、昨今の車はインパネ上部に突き出たモニターの採用が多いが、水平基調のコンソール上部を優先させ、スッキリとまとめたこのインパネ周りのデザインはとても良いと思う。スポーツカーなんだから、インパネ上部がごちゃごちゃしているのは好みではない。

空調

センターコンソール下部には3連ダイヤルが配置されており、適度なクリック感がある。ダイヤルの中には温度や空調の設定が表示される仕組みもよい。その下にはエアコン関連の大きめのプッシュスイッチがあり、操作性は良好だ。空調関係の操作性はタッチパネルのみのクラウンよりも数段優れている。コンプレッサーの性能に不満はなく、クラウンほどではないが室内をしっかりと冷やしてくれる。

写真ではオレンジに見える照明も、全て赤色

下の吹き出し口は先代アクアの流用品

シート

非常に秀逸な出来栄え。体にフィットし、適度な硬さがあり、包まれ感が安心感につながる。助手席も好評で、やはり包まれ感が良いとの評価だ。出来の良いシートに包まれ、囲まれ感のあるコックピットはスポーツカーならではのもの。

ウルトラスエードにパーフォレーション加工が施され、ムレ防止に役立っている。さらにRZグレードにはシートヒーターも装備されている。

シフト

マニュアルシフトを模したデザイン、シフトは段差ありのゲート式で節度感ありで操作が気持ちよい。Dレンジから右側に倒すとマニュアルモードとなるが、前に倒して+、後ろに倒してー。私見だが減速をするとGが前方に作用するから、レバーを前に倒してー(Gと同じ方向にシフト)が理にかなっている。とは言うものの、マニュアルシフトはパドルで行うので大きな問題ではない。

200系クラウンアスリートに乗っていた時、上記のことが気になってシフトチェンジャーを付けたものの、ほとんど操作しなかったことを思い出した。

GR86のパドルシフトは若干重めで剛性感がある本格的なもの。スポーツカーだから、そういうところの感覚評価をしっかり行っているのだろう。

ペダル

大きなフットレストとブレーキペダルは問題ない。しかし、アクセルの位置(奥行き)がよろしくない。ブレーキペダルと比べて奥にあるので左右の足の前後位置に違和感があった。強くブレーキを踏んだ際のバランスを考慮しているのだろう。しばらくすれば慣れるので問題なし。

ウインドウスイッチ

オートリトラクタブルミラーがメーカー・ディーラーオプションにもないことは大変残念だ。コスト重視とは言え、これは標準装備してほしかった機能だ。自分の場合はほぼ100%格納し忘れる。エンジンを切ってしまうとイグニッションオンでないと動かないのも痛い。DIYで社外品を取り付け出来るのだが、内側にある防水ブチルゴムが汚らしくなるので躊躇している。

BRZにはオプションでキットが用意されているが、リモコンキーによる解錠でミラーが閉じ、イグニッションオンでミラーが開くという仕様。つまり、リモコンキーによる解錠ではミラーが開かない。

内装の素材

内装の素材が若干チープと感じる。樹脂部分は爪が当たっただけですぐに傷が付くし、硬度が足りないような気がする。シフト付近の銀色の塗装が薄くて弱く、ちょっとしたことで凹んだりするのはいただけない。

また、ステアリングの奥のパーツやメーターベゼルにザラザラした質感のプラスチックが使われていて、シリコン系の保護液をマイクロファイバークロスで塗ろうとすると引っかかってしまうのも残念な点だ。

艶出し&表面保護用のポリマースプレーが欠かせない。

走行性能

ステアリング操作に対する鼻先の反応は鋭く、容易に向きを変えようとする。ステアリングは重めで、スピードを上げるほどに直進安定性が増して、車が安定する。エンジンは水平対向4気筒でバランス良くストレスなくレッドゾーンまで吹け上がる。車を運転すること自体が楽しいと感じさせられる素晴らしいハンドリングとレスポンスだ。

乗り心地は「硬い」、相当に硬い。ちなみにクラウンはAVSによってダンパーが可変するタイプで「SPORT S+」では結構な硬さになるが、GR86は世界が違うというくらいに硬い。ギャップやうねりを見ると体に力を入れ、車体の挙動に対応する準備をする。それが続くと、正にぐったり、というのが慣らしの頃。慣らしが終わるに連れて各部が馴染んで刺々しさがなくなり、体も慣れたのか、そんなに疲れは感じなくなったが、クラウンの快適さを知っている身にとってGR86での長距離は少々つらいものがある。

GR86はセカンドカーとして最高の車だが、これだけで通勤・レジャー・家族サービス・買い物すべてをこなそうとするのはちょっと無理があるかもしれない。

自分の車遍歴や各車試乗も含めて、GR86は運転が最高に楽しい車だと断言する

エンジン

GR86のエンジンはFA24型、2.4リッターの水平対向エンジン。前モデルではモアパワーとトルクの谷について改善を求める声が多く、ターボ化も検討されたらしいが、スポーツカーとして重心高を低く抑えたいことやリニアに吹け上がる特性を重視した結果、従来型をボアアップした自然吸気エンジンを開発することになった。

歯に衣を着せない評論の清水和夫氏にして「ポルシェが作ったんじゃないの」と言わしめたこのエンジンは、ストレスなくレッドゾーンまで回り、トルクも淀みなく溢れ出てくる感覚。バランスエンジンのフラット4ならではの振動の少なさもあって、回すのが本当に楽しく、気持ちがいい。特にGR86はアクセルが「早開き」に設定されており、ちょっと踏んだだけでレスポンスよくエンジンが回る特性となっている。

低速トルクも十分で、発進から法定速度にいたるまでもたつくことはなく、高回転域を使っても回すのがためらわれるようなノイズや振動はない。これまで経験してきたエンジンの中でもダントツ一位のスムーズさだ。

カバーに刻印されたD-4Sはトヨタ独自のガソリン直噴エンジン技術で、ポート噴射と直噴を切り替えるシステム。低負荷域ではポート噴射、高負荷域では直噴として出力と低燃費を実現している。直噴エンジンが抱える煤の問題はポート噴射が煤を洗い流すことで解決している。(ウィキペディア)以前乗っていた200系クラウンアスリートに積まれた2GR-FSEもD-4Sだ。

トヨタとスバルの共同開発車であるGR86とBRZのみにこの技術が供与されているので、燃費が悪いとされるスバルは喉から手が出るほどこの技術が欲しいのではないかと思う。

愛車遍歴2台目のシルビア K’sはCA18DET(175ps、23.0kgm)を搭載していたが、とにかくがさつなエンジンで低中回転まではよいのだが、高回転域ではノイズとバイブレーションがひどくて回す気にならなかったことを思い出す。

愛車遍歴3台目のカルディナGT-Tは3S-GTE(260ps、33.0kgm)を搭載していたが、このエンジンも高回転域では少々がさつな印象があった。


愛車遍歴4台目のインプレッサ WRX STi(GDB-C)は、これまた名機であるEJ20(280ps、40.2kgm)を搭載していたが、FA24と比べると高回転域のスムーズさでは劣っていたと思う。

技術の進歩は素晴らしい。

6AT

アイシン製のATで前モデルからのキャリーオーバーだが、細部が改良された進化版のミッションだ。特にスポーツモードにおける変速ロジックが改良されていて、コーナー前では減速に応じてシフトダウンを行う。マニュアル操作をしないという前提で、一般的なATは常に高いギアを保とうとするため、減速に伴いシフトダウンを行わずに高いギヤを維持する。コーナーの立ち上がりでアクセルを踏むと、その時点でキックダウン(ギアを下げる)をして加速体制を作るが、「低いギアを保ったままコーナー、そして立ち上がりからスムーズにシフトアップ」という流れは望めない。

AMG A45の7速DCTでも車速やブレーキングに応じた変速制御が行われていて、スポーツ心をくすぐる演出に胸を躍らせたのを思い出す。A45のはそれに盛大なブリッピングが加わっていたが、GR86は正確にブリッピングするものの音の演出は控えめだ。

なお、スポーツモードではシフト制御が変更され、よりダイレクト感が増し、変速ショックが顕著に感じられる。停止のために車速を落としていくと1速まで順にダウンシフトが行われ、変速ショック(ダウンシフトの度に車が前に押し出される)を感じる。ノーマルモードでは感じないその感覚は、スープラのスポーツモードの時に感じたのと同じだ。

さらに、スポーツモードではASC(アクティブサウンドコントロール)が効いて、音の厚みと迫力が増す。ノーマルモードではASCの効きはさほど感じられないものの、スポーツモードに切り替えると中低音に厚みが増すとともに音量もアップするのでスポーツカーに乗っているという満足感が得られる。もちろん車外の音量や音質は変化がないので、騒音規制が厳しい昨今、このようなシステムは苦肉の策ではあるが、妥当だと思われる。

ちなみに、クラウンはスポーツモードにおいてESE「エンジンサウンドエンハンスメント」が装備されており、ASCと同じように電子音による演出がされる。ただ、この音は右側下部のスピーカーから出ている印象が強く、エンジンの音として位相が今ひとつマッチングされていないと感じていた。GR86のASCはセンターコンソール内部(ナビの下部付近)に専用スピーカーを配置しており、こちらは素の音との位相マッチングは素晴らしいと言える。賛否両論ではあるが、素直に良い音だし、いやならディーラーでカットオフすることも可能だ。

MT仕様なら5速で直結状態(ギア比1.00)となるので1速から5速までを細かく切り、クロスミッション的に小刻みなシフト操作を可能としているのだが、ATは直結状態になるのが4速のため、MTに比べて各ギヤが離れている。マニュアルモード時にエンジンの回転を有効に使えないなどの評価もあるが、普段街乗り主体で使うのであれば、シフトが頻繁に行われてわずらわしさが増すデメリットもある。スポーツモードに入れた時だけ、ギア比が可変で刻みが細かくなれば素晴らしいのだが、そんな事はできないわけで、楽乗りATはこれでいいのだ。8ATだったら…と考えなくもないが、そうなると重量の問題が生じる。

エンジン回転数が4000回点以上の状況ではミッション保護(エンジン保護?)のためにシフトダウンがキャンセルされる。「ピピピッ」と警告音がなり、操作が受け付けられない。これはクラウンでも同じだ。受付可能ギリギリの回転数でシフトダウンすると、ブリッピング後にレッドゾーンまではまだ若干の余裕があるようなので、あと500回転でもいいから上限値を変更してほしい。

アイサイト

スバルと言えばアイサイト。GR86はスバルが生産している車ではあるが、トヨタのカタログにアイサイトの文字があるのはある意味感動、トヨタの懐の深さを示すトピックだ。GR86のアイサイトはステアリング制御なしのバージョン。自分はクラウンであってもステアリング制御は使わないので、特に問題なし。前車との距離を保ち、自動ブレーキ等で安全を担保してくれれば十分なのだ。

せっかくのアイサイトなのだが雨天時はキャンセルされることがあって、レーザー方式との優劣はどうなのだろうか。

ATには全車速追従型ACCが装備されていて高速道路を走る際に役立つのだが、GR86は運転が楽しすぎてアイサイトの出番は本当に少ないのが正直なところだ。

その他・雑感

GR86を手に入れられて幸運だった。1月に発注して納車が6月、5ヶ月での納車となったわけだが、現時点では納期が1年。車が欲しくても手に入れられない時代になってしまった。

以前は、3ヶ月でも長いと思っていた納期だが「納期は販売店にお問い合わせください」が当たり前のようになってしまった。ディーラーでは中古車も品薄で「本当に売る車がなくなっている」と担当の方は嘆いていた。

特に、スポーツカーは「販売予定数を超えて受注停止になり、新車では手に入らなくなり、プレミアが付いて更に手に入らなくなる」というスパイラルに陥る可能性がある。

今思うのは「即断即決してよかった」ということ。

この手に入らない物なんて無いと思ってたけど・・・と古内東子さんの「心にしまいましょう」が妙に心に刺さるのだった。