GR86で弘前に行ってきました。日帰りの強行軍、目的は満来飯です。
「満来」は学生時代の思い出
「弘前」私にとって、郷愁を呼び起こす言葉。学生時代を過ごした弘前は、私にとって第二の故郷だ。
1980年代中盤の大学4年間は、金はないけど人生で最もしがらみがない自由な時代。私が弘前で学生生活を送る前の1983年(昭和58年)に創業した「満来」は富野町にあり、下宿から大学に行く途中にあったため、足繁く通ったお店だった。そして、40年の時を経て弘前の名店、弘前のソウルフードと言われるまでに愛されている。
【創業当時の場所】
カウンターのみで6席ほどの小さな店だったが、夕方の5時から深夜まで営業していて大変繁盛していた。ここの料理は学生相手ということもあり、普通盛りでもかなりの量があった。
マスターは無口で照れ屋な方であったが、顔を覚えてもらうと「◯◯ばー、まいねなぁ」「◯◯だっきゃ」などと、津軽弁で優しく声を掛けてくれたり、世間話などもしてくれた。バイトの帰りにもよく立ち寄り、マスターに愚痴を聞いてもらったり励ましてもらったりしたこともあった。
あの狭いけど活気のある店内が、今でもキラキラした思い出として脳裏に焼き付いている。注文を受けると「はいよーっ」って言うのが口癖だった。
満来で初めて食べたのはチャーハンで、同じような味のチャーハンをいまだかつて食べたことがない。シンプルだけどやみつきになる、ちょい味濃いめの美味しいチャーハンだった。
それに加えて、弘前のソウルフードと言われる満来飯や満来めんを編み出した方なのだから、マスターはすごい人である。マスターはどこで修行したのだろうか?
さて、私のお気に入りは、店の名前を冠した「満来飯」と、先程の「チャーハン」の2つだった。
余談ではあるが、その他にもメニューがあるのだが、4年間の中で一度も見たことがない料理もあり、ある時客が「◯◯ってどんなの?」と尋ねると、マスターが「あまり出ないよ」と全く乗り気のない返事で半ば強制的に諦めさせたという場面を覚えている。
満来飯と満来めんは赤味噌(八丁味噌?)を使った甘辛の餡をたっぷりとかけた料理。ちなみに白味噌を使ったのが味噌飯で、麺にかけたのが特製らぁめんとなる。
味噌餡の具材は注文を受けるたびにマスターが中華包丁で切り始める。
- 人参
- たけのこ
- 白菜
- ニラ
- 豚肉
これを炒めて赤味噌と謎の液体(油?)と調味料、水溶き片栗粉で仕上げる。この味噌餡をご飯や麺が見えなくなるほどたっぷりとかけて出来上がりとなる。弘大生は、皆お世話になったのではないだろうか。
参考 【No.51 弘前市】市内人気の餡かけ麺!らぁめん満来の「満来めん」つがぐるめ
現在は移転し、娘さんが味を継承している
10年ほど前に、200系クラウンで25年ぶりに食べに出かけた。
2013年6月29日 撮影
昔と比べるとショートヘアで、ちょっと痩せたマスターが厨房で忙しそうに鍋を振っていた。私にとってマスターが作った最後の満来飯。ほんと、美味しかったなぁ。当時は忙しさに遠慮して声を掛けなかったが、今となっては声を掛けておけばと後悔している。
大学近くの富野町から末広町に移転し、20年以上に渡り新店舗にて営業を続けてきたが、先代店主(マスター)がお亡くなりになり閉店。
しかし、2017年7月に娘さんが新店主となって復活。マスターの奥様と二人で店を切り盛りしてきた(現在、奥様は引退されたそうです)。
この復活にどれだけの人が歓喜したか、想像に難くない。
宮城から青森まで 満来飯を求めて
2019年には220系クラウンで弘前に行ったのだが、お盆期間中に行ったものだから臨時休業と残念な結果に。2022年はGR86で、満来版を食べるためだけに弘前に行くことにした。午前6時に家を出発、途中土砂降りも。
盛岡を過ぎる頃から晴れ間が見えてきた。花輪サービスエリアにて、ハイラックスと並ぶとGR86がまるでミニカーのよう。
11時に満来に到着(自宅を出ておよそ4時間)来たのは3年ぶり、食べるのは10年ぶりだ。開店までまだ30分あるが長旅の疲れを癒やすため、駐車場の端に止めて開店時刻まで待つことに。(人気店のためひっきりなしに客が来るのだが、駐車場は5台分ほどしかないので要注意)
2022年7月撮影
11時15分を過ぎたあたりに、男性の店員さんが「もういいですよ!」と声を掛けに来てくれた。なんとありがたい。
店内に入るとすぐに券売機があるので、「満来飯」の大盛りと、持ち帰りの普通盛りの券を購入。店内は相変わらず清潔感があってきれいだ。水はセルフ。カウンター8席と4人がけテーブルが2つ。
10年前と同じ席に座る。カウンター越しに見える娘さんが忙しく調理している姿に、亡くなったマスターの姿が重なる。前に来た時はマスターがあの場所で鍋を振っていたっけ…10年ってはやいもんだ。
私より先に注文していた母親とその娘さんの所に満来飯が到着、その母親は笑顔で小さくガッツポーズしていた。この方も、きっとこの味に様々な思い出があるのだろうと勝手な想像を巡らす。
10分ほど待って着丼、その間にも客がどんどん入ってくる。外を眺めると、同じ車が何度も店の前を通過する。路駐禁止なので、皆駐車場が空くタイミングを待っているのだ。
※路上駐車は絶対におやめください。
供された満来版は、私の脳内満来飯と全く同じだ。
娘さんが継承した満来の味は如何に!
一言、う・ま・い!
あの唯一無二の味が見事に継承されている!
味噌餡の色も味もとろみもおんなじだ!
ああ、この味だ、学生時代の思い出が蘇る!
この味をしっかりと引き継いでくれた娘さんに感謝!
ありがとうございます!
レシピ通りに再現しようとしても、なかなかうまくいかないのが料理の難しいところらしい。唯一無二の味を完璧に再現した娘さんもまたすごい人である。
ああ、スプーンが止まらない、先代が亡くなった今でもあの味がしっかりと引き継がれていることに涙し、そして、最後の一口がなくなった。懐かしい味との再会、そしてそれを完璧に引き継いだ娘さんに感謝を込めて「ごちそうさまでした」、心の中で「これからも頑張って」と。
娘さんの元気な「ありがとうございました」に一礼し、店を出る。「ありがとうございました」は、こちらのセリフです、また来ます…
満来を後にした私は、「弘大」「駅前」「西弘」「土手町」「松森」「大富町」「桔梗野」「城東」「松原」あたりをGR86でゆっくりと流し、帰路に着いたのだった。
さて、こちらはお持ち帰りの満来飯
パッケージにも名前が入っている。女性店主ならではの気遣いか。受け取ってから家に帰って食べるまで6時間、でも結構温かいのに驚き。少しだけレンジで加熱することに。
餡がシャバシャバになっておらず、店で食べる時のようにドロッとしているし、ご飯が見えてない。時間が経っても店で食べる時と同じ状態なので、テイクアウトでも正に店味、満来の味を十分に堪能できる。
- 店内飲食は11時30分~14時まで:定休日は水・日・祝
- テイクアウトは店内飲食の日と、平日の16時から18時まで
遠方から食べに行くのは少々ハードルが高いことを覚悟しなければならない。店内飲食は昼のみで、水・日・祝は休みだから平日無理な人は土曜日の一択となる。
平日可能な方は私のように開店前に早々に駐車場を確保するか(土地勘のない者が狭い路地の住宅街をさまようのは厳しい)、テイクアウトを事前に予約し、宿でゆっくり食べるのはいかがだろう。
さて、嫁もご相伴
懐かしいものには「懐かしバイアス」がかかっているもの。懐かしバイアスによって本来の何倍も美味しく感じることはよくあることですね。満来飯が生まれて初めての私は、少々疑いの目をもって食べてみたのでした傍らにはニヤニヤした旦那がいます。
お、美味しい!
何これ、赤味噌の甘みが具材の味を引き立てていて、決して辛くはなく、優しさに溢れる味と言ったらいいんでしょうか。これは今まで食べたことがない味です。旦那が唯一無二の味と言っているのが分かります。
ね、美味しいでしょ!?
うん、やみつきだね、クセになる、この味は。
これまで食べたことがない味で、本当に美味しい!
このブログで宮城・仙台の美味しい料理を紹介してきたけれど、これが一番かも。
最高のあんかけご飯でした。
ごちそうさまでした \(^o^)/
満来が近くにある幸せ、羨ましい限り (๑˙❥˙๑)
二人で満来飯を食べ終わってから、満来のLINEに今日のお礼を書きました。思い出の味を再度味わえたことがとても嬉しかったからです。新マスター(娘さん)からも返信があり、これからも陰ながら応援し続けたいと思いました。